瞬間の言の葉

ふと胸に残った、短い一瞬のことば。

大きな鳥居のように、ドンっと立っているあなたが好きで仕方なかった。あなたに出逢えてよかった。

あなたのくしゃくしゃの下手くそな笑顔が、その慣れていない感じがよかった。だからあなたを選んだの。

「わたしちょっと強いの」そう言って拳を握った君を見たときに、ずっと側にいようと思ったんだ。

木枯らしに前髪が揺れて、少し紅くなった君の頬の両側に、ツイードのコートの衿が立っている。そんな君の表情を正面から見つめることを許されている僕は最高にしあわせだ。

「送別会の挨拶をお願いします」と、初めて話しかけてきた君の瞳の特別さに気付いた。深く濡れたような黒の奥から、光の粒が溢れ出す、間違いなく僕がみた一番美しいものだった。

何がしあわせかって、君が腕の中にあって、大好きなその髪に鼻先を埋めても怒られないでいられることだよ。

乱暴に洗い物をする、あなたの指輪がカチッと皿にあたる音がする。一緒にいられるしあわせが響く。

小さな頃、一緒に手のひらを太陽にかざした。今も地面に並んで寝っ転がって、同じことをしてる。30年も経ったけれど。

駅で携帯のタイマーが鳴った。すぐに止めたその人は、背筋をしゃんとさせて、瞳をきりッとさせて歩き出した。その目元が美しくて、がんばれとつい心が呟いた。

秋が進んだ夕暮れ、こんなところでと奪われた唇が、あなたの温もりにほどけてゆく。

ちょっと前は、空なんて全部消えさってしまえばいいと思っていたのに、大切な人ができてから、すべての空が愛しい。

君と昔はさぁ、磁石の同じ極同士のように弾き合ってたのに、いまは違う極同士のようにくっついて離れられないでいるよ。

もう6年、ずっと片思いなんだけどさ、君がいるというだけで、この街がどんどんと好きになってるんだよなぁ。

どうしても行き詰ったときにはさ、一度も降りたことのない駅を降りて歩き回る。その街の全員、出逢うはずもなかった人なんだと思うと新しい気分になる。コーヒーの美味しい店なんて発見したら最高だし。

秋の夕暮れの孤独に負けそうになると、あなたにすべてを打ち明けて、玉砕してしまおうかと考える。いつもギリギリ。

小さな頃、クレヨンでごしごし塗るのが気持ちよくて、画用紙一面、真っ赤に塗ったときと同じ。全面、隙間なく真っ赤に君のことが好きだ。

学生の頃から着ているダッフルコートの「ボタンが留められなくなりそう」と、大きくなったお腹で嬉しそうに言っていた君。

哺乳瓶を空にした君を肩に乗せて、トントンと。小さなゲップの音がパパになった最初の自信。

最初に惚れたのは、あなたの手でした。背中越しに見えた、キーボードを叩く細く白く繊細な指先。やばい、この指の人が欲しい、、でした。

トップスが甘くて、ボトムスは強い印象のファッション。可憐な顔立ちと、靭くてしなやかな内面の君そのものだと、いつも思って見ている。好きだ。